研究概要
私たちの研究室では、「有機合成化学」の高度な知見を基盤に、新規高分子材料の創製とその応用展開に取り組んでいます。
また、「計算化学」と「実験化学」を融合させたアプローチにより、反応機構の解明や材料特性の予測を行い、
効率的な合成プロセスの設計や材料性能の最適化を図っています。
これらの研究成果は、環境調和型材料の開発やバイオマテリアル・エネルギー関連デバイスなど、さまざまな分野への応用が期待されており、
持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
研究テーマ
①多成分連結反応による高分子合成
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多成分連結反応とは、三成分以上の反応基質がワンポットで反応し単一の生成物を与える反応を指します。
その反応の複雑さからは想像しにくいですが、有機化学の萌芽段階から存在している古く新しい反応形式です。1850年代には、 Streckerアミノ酸合成が発見されました。この反応はアミン、アルデヒド、シアン化水素間の 三成分連結反応として認識されています。有機化学においては、昔から存在している反応形式ですが、 高分子化学に積極的に導入されたのは、驚くべきことに2010年代からとごく最近です。
当研究室では、多くある多成分連結反応の中から十分に高分子合成に適用可能な反応群の選定、 およびそれに基づく高分子合成を行っています。
詳しくは以下の総説を参考にしてください。
Kakuchi, R*, "Multicomponent Reactions in Polymer Synthesis", Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53 (1), 46-48.
Kakuchi, R*, "The dawn of polymer chemistry based on multicomponent reactions", Polym. J. 2019, 51, 945-953.
②有機・高分子材料の表面機能化
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当研究室では、 高崎量子応用研究所のグループ (プロジェクト環境資源材料研究) との共同研究により、工業的な応用も進んでいる 量子ビームグラフト重合技術 と生物由来資源を活用した新しい高分子材料の表面修飾反応を開拓しています。
最近では、量子ビームグラフト重合技術に対して、化学者にとってイメージしやすい材料の性質を使った機械学習モデルを作り、 反応を理解・予測することにも成功しています。
詳しくは以下の論文を参考にしてください。
Kakuchi, R.*; Tsuji, R.; Fukasawa, K.; Yamashita, S.; Omichi, M.; Seko, N.*, Polym. J., 2021, 53(4), 523–531 .
Matsubara, K.; Nirazuka, T.; Takahashi, K.*; Matsuda, T.; Kuroiwa, M.; Omichi, M.; Seko, N.*; Kakuchi, R.*, Mater. Today chem. 2025, 45, 102610.
③フッ素を含む新しい高分子反応の深化
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フッ素はその小さな原子半径とその大きな電気陰性度により、最も特徴のある元素のひとつです。
このため、フッ素を高分子に導入すると、その反応性や基礎的物性が文字通り”劇的”に変わることがよく知られています。 しかしながら、その特徴的な性質のため、フッ素導入反応は一般的に困難を極めます。このため、当研究室ではフッ素化学を専門とする 有機合成化学研究室 (群馬大学・網井研究室) とのジョイントテーマで、フッ素の特徴を生かした新しい高分子合成を展開しています。
最近では、量子化学計算による反応機構解析を通して、実験的にフッ素ポリマーの可逆的アミノリシス反応を達成しました。
詳しくは以下の論文・総説を参考にしてください。
Kasai, K.; Amii, H.; Kakuchi, R.*, Polym. Chem. 2024, 15, 4622-4626.
Kakuchi, R.*; Kasai, K.; Matsubara, K.; Amii, H., Polym. Chem. 2026, 17, 511-517.
④バイオ由来資源を活用した新しい材料合成
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近年、世界的な石油資源の枯渇およびそれに伴う価格の高騰により、生物由来資源の有効活用に大きな期待が寄せられています。
当研究室では、天然高分子である多糖類を対象とし、高分子反応を駆使することで構造制御された化学的変換を行い、 多様な機能性材料への展開を目指した研究も行っており、フランス、CNRS-Cermavに在籍されている 大塚一世 グループリーダーら との共同研究によって、合成した材料の機能化および応用可能性を探究しています。
⑤新規双性イオンポリマーの開発と材料への展開
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東京薬科大学の矢内光 准教授ら との共同研究により、当研究室の高分子変換技術を組み合わせた、新しい高性能な機能を有した有機材料として新しい双性イオンポリマーの開発を進めています。
また、 高崎量子応用研究所のグループ (プロジェクト環境資源材料研究) との共同研究による材料化だけでなく、台湾・中原大学にある 薄膜技術研究発展センターの研究グループとともに、双性イオンポリマーがもつ性能の評価も進めています。
詳しくは以下の論文を参考にしてください。
Kakuchi, R.*; Oguchi, T.; Kuroiwa, M.; Hirashima, Y.; Omichi, M; Seko, N; Yanai, H.*, Chem. Sci. 2024, 15, 19322-19372. Kakuchi, R.*; Oguchi, T.; Omichi, M.; Seko, N.; Dizon, G.; Chang, Y.*; Yanai, H.*, Macromolecules 2026, 59(5), 2698-2705.